7月23日(木)朝、雷雨、のち雨

  7時半眼覚しで起きるとアンナは一睡も出来なかったという。「僕、いびきかいた?」と訊くと、「かかなかったわ。でも明け方ひどい雷雨が来て、爆撃みたいだったの」。私はこれを気にも留めず寝ていたことになる。「何度も何度も寝返り打ったけど、二つしかポジションないでしょ、そのうち肩と腰と痛くなっちゃって、ますます眠れなくて」。そう、妊娠中は、うつ伏せも仰向けも良くないので左側か右側を下にするしかないのだ。かわいそうに。マッサージをする。「気持ちいいわ。人類は大昔からマッサージしていたのかしら」「いつからは知らないけれど、多分そうだろう」「でもサルはやらないよね」。ヨガニドラを寝床でやることを思い付き実行。これでリラックス出来、ようやく寝付けたようだ。11時ごろに起きてくるとアンナ、「ヨガニドラ、夜中にやれば寝れてたかも」。
 領事館から吉報。昨日参考までに送って置いた戸籍謄本の写真で、胎児認知の登録をしてくださるという、出産予定日までに日本から郵送の戸籍謄本が届かない可能性があるので。コロナ禍の非常時とはいえ、柔軟な対応がありがたく、胸打たれる思いだ。

 昼食時の会話:「出産の準備、エコじゃないわ。こんなつもりじゃなかったのに、プラスティックばっかり」「そうだね、マットレスの保護カヴァーも、紙おむつもプラだ」「出産用の子供プールも、洗濯物のバスケットもバケツも」「このシステムに対抗しようとすると相当な労力と費用がかかってしまう」「仕方ないのかなあ」。

 午後、アンナは布地などの整理、断捨離。私は領事館に提出する書類に記入してスキャン、メイル書く。

 食器棚の下部に入れてあるプリンターを出すと、木粉が積もっている。古い家具だから、虫喰いだろうか。南仏に住んでいた時はずいぶん家具を虫に喰われたがここでも?アンナと二人でライトで照らして内部を見るが、虫喰いの穴は見あたらず。何と、引き出しを支える角材が引き出しの重さに耐えかねて少しずつ削られているのだった。何せ、アンナのおばあちゃんの家から来たという家具なのだ。鉛筆で書かれた三桁の電話番号と旧い書体の誰かの名前が残されている。家族伝来にして明らかに戦前のもの。これは明日にでも蝋を塗ることにしよう。

 夕刻、庭に出ていたアンナ、「ちょっと見に来て!」と駆け込んでくる。外に出て空を見上げると、濡れた和紙に墨で描いたような二条の線が淡く滲んで消えながら南に運ばれて行くところだった。両腕を水平に突き出して「こういう飛行機が線を引きながら飛んで行ったの」とアンナ。その仕草とまだ聞こえているエンジン音からセスナ機かなと憶測する。機体そのものは見損なったが、その翼跡は抽象アートのようで、しかもエフェメールで、これを見れたことを僥倖に思った。

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