6月22日(月)パリ、快晴
8時前起床。またまた朝日が暑いぐらい。ここから遠くないセーヌ川のカモメの声を聞いていると、シェルブールかどこかの港町にいるような錯覚を覚える。パリの我が家でカモメの声が気になることは今までなかったように思うが、過去三ヶ月を海のない国で過ごしていたので、耳新しく思うのかもしれない。
リビングの暖炉前のスペースを占拠している二つの古スーツケース。一つは父が70年代に海外旅行に使っていたサムソナイトで、確か、おあつらえで当時は珍しかったキャスターを付けた特製。父のイニシャルのプレートが埋め込んである。もう一つは角ばったジュラルミン製。これは何と、63-4年に私の家族がニューヨークに住んだ時に持って行った年代物。前者を開けるとハンガーをつけたままのシャツが折り重なっている。先週同様、隣の裁縫店に引き取ってもらうことにする。後者の中身は狂言の松本さんから譲っていただいた貴重な衣装類。これは迷うことなくキープ。帯だけはザルツブルクに持って行く。密閉できるので、除虫剤を入れて一時的に地下のセラーに。これで少しスペースが空いた。このスーツケースたち、84年に私が渡米して以来、ダラス、ニューヨーク、パリ、南仏、そして再びパリと移住して来たわけだ。アンナも「インテリアとしても使えるわね」と言ってくれているので、これからも私の住むところ、一緒に付いて来るのだろう。
午後は冷蔵庫の清掃。ザルツブルクでの最近の経験から、裏側のコンデンサーコイルの掃除と冷凍庫の解凍。気になっていたので、気分がせいせいする。
アンナは、庭からラズベリーやヨスタベリーを初収穫したそうで、写真を送ってくれる。トマトも甘くて美味しいとのこと。「トマト、植えかえするけど、ミニとマックスどうする?」と訊くので、躊躇なくやってもらう。移植後の写真を送ってもらったら、ずいぶん花が咲いているので嬉しくなる。「里帰りした子供が元気にやっているよ」、とパリの親トマトに話しかけたくなった。