4月1日(水)<その1> まだ寒いが快晴
今朝は目覚ましの鳴る前にアンナがすでに起き出した。ダイニングに降りていってみると、注文してあったティーポット用ガラス製のフィルターが届いていた。実はこれ、いわくつきのしろものなのだ。このガラス製ポット、うちに来てからまだ数週間にしかならない。たまにはちょっと贅沢な買い物をしよう、と相談して買ったポットだったが、配達された品物を見て、そのあまりにも繊細な出来に私は少し憂鬱になった、「壊したらどうしよう…」。
これには前史がある。アンナのうちに来るようになってから判明したことなのだが、どうやら私にはガラス器を壊す才能があるようなのだ。明らかなアクシデントで壊れたものもあるが、どういうわけかガラス器を落としたりぶつけたりしてしまう。もちろん壊そうという意思はない。私に言わせると、「彼らが」落ちたりぶつかったりしてしまうのだ。まるでこれらの「もの」がそれぞれ意思を持っているかのように。計量カップに始まり、レモン絞り器、水差し。イケアブランドの大きなサラダボウルが、するっ、と私の手から滑り落ちて木っ端みじんになるのを、見ているだけで何も出来なかった時は、さすがに自分ながら呆然とした。この1秒の何分の一かのなんと長く感じられたこと!それでいて何も出来ない、こんな矛盾があるものか。
これらのガラス器は大半がイケア製でそんなに値の張るものではなかったが、今回のポットは1クラス上の品物、由緒あるドイツのイエナー製。1920-30年代に「バウハウス」のアーティストたちもデザインに関わったという。このティーポットもちょっとクラシックな風貌でなかなか美しい。さっそく我々の慣習に従って、「ビューティ」と命名した。注ぐ時に一滴も漏れない優れもの。よく観察すると面白いことに、この注ぎ口が左右対象のストレートではないのだ。少し左寄りにひねってある。このあたりにも、実用性を重んじたバウハウスの伝統が生きているのかも知れない。
白状すると、数日前、これのフィルターを、ものの見事に割ってしまったのだ、私が流しでゆすいでいる時に。ふとしたはずみから手が滑って流しに落としてしまった。余りにも落ち込んだのでその日のブログには書かなかったほどだ。「しまった!」と叫んだが、叫んだところで壊れたものが直るわけでもない。アンナも呆れて「やると思ってたけど、やっぱり!」。不穏な空気が流れる。
不幸中の幸いはメーカーものだけに、パーツの分売もしてくれること。アンナを文字通り拝み倒して、スペアをネットで探してもらう。というのも、アンナはインターネットショッピングの天才なのだ。より良いものをより手頃な価格で見つけてしまう、それも多くの場合直感的に。ネットショッピングにはもちろん賛否あろうし、我々も出来るだけネット販売をしている小売店や小企業、そして出来れば国内から買うことにしている。
まずメーカーのサイトを見たら意外に送料が高い。「現品より送料の方が高いんじゃなあ」。こういう時アンナはヘコタレない「国内も見てみる」…「あるわ、ウィーンに!」。ウィーン中心街のお茶専門店、送料がメーカーより安い。オーダーしてみたらどういうわけか送料が計上されていない。なんと「コロナ特別救済セール」をやっていて送料無料と判明。
捨てる神あれば拾う神もあり、というのは本当らしい。
~4月1日(水)<その2>に続く~