3月28日(土)好天
1週間ぶりで買い出しにゆく。素晴らしい天気でポカポカ。アンナの話では、レジでは前の人と間隔をとって並ぶ指示が出ていて、床にもマーキングがしてある。それに従っていたら、年配の婦人が何の躊躇もなく割り込んできたので、ちょっと驚いたとのこと。こういった措置は本来、特にコロナ弱者であるお年寄りを護るためとも言えるのだが。
昼食後、アンナは庭仕事。私は「ゴースティ」の錆対策。ゴースティと言うのは我々の愛車の名前。トマトのミニとマックスもそうだが、我々は「もの」に名前をつけるのが好きだ。掛け布団の「ソフティ」、ピアノの「オールディ」に始まり、大きな音を立てる食器洗い機は「ノイジー」、CDプレーヤーが動いたり動かなかったりするステレオは「ムーディー」といった具合。ムーディーはあまりにも名が体を表すようになったので、今では隠居してもらっている。さらにトイレのドアにはエレガントにフランス語で「パーフュムリー(香水製造所)」と表示があり、玄関はその用途から「ビッグ・フリッジ(大冷蔵庫)」。インサイドギャグに過ぎないといえばそれまでだが、便利だし、生活にユーモアを持つことは悪くない。
ゴースティは2008年以来、私が南仏で乗っていたクルマだ。1991年製のボルボのステーションワゴン。オーストリアに持ってきてアンナの所有で登録してある。この登録変更のとき、あまりにも古いのでEUのオンライン台帳に載っていないことが判明し、「まるで幽霊みたい」と話したのが名前の由来。ボルボが20年近くも基本的に変えなかったデザインは、コントラバスを3台積めるその機能性に象徴される。何年か前の晩夏にザルツブルクからパリを経てノルマンディに至り、そこからフランス大西洋岸を長駆スペインのビルバオまで南下したことがある。この旅ではゴースティの後ろにマットレスを積み込み車内で寝泊りしたように、キャンピングカーもどきとしても使える。この時は5000キロ走った。すでに43万キロ近く走っているが、メンテをしっかりしているので実によく走る。この世代のボルボのエンジンは50万キロ走れるように設計されているそうだから、まだここ数年はお世話になるだろう。
多少の整備は我々でやってしまう。エレクトロニクスになる前のテクノロジーだから出来ることで、世界中に愛好者がいるようだ。パーツの一つでも替えれば愛着も湧き、ますます大事にするようになる。今日の整備はメカニックではなく、錆の処理とその後の塗装。日本から買って来たサビ落とし剤で処理後、プライマーとラッカーをスプレー。これらは私のメインの趣味である鉄道模型用でもある。好天に恵まれて楽しみながらの作業で、低湿度のおかげで仕上がりもまずまず。
前庭からアンナが家裏の斜面を指差している。見ると今シーズン初の羊の放牧であった。先日以来の農家の人はやはり、フェンスの手入れをしていたのだ。生垣沿いに、アンナが名もない美しく小さな花を見つける。彼女でさえ、うちの庭では初めて見る種だという。どこから来たのだろう?
就寝前、恒例の足のマッサージをしながらサニーのこと、いろいろ話す。そしたらサニー自身、活発に胎動して、まるで意思表示をしているようであった。アンナと二人、愛おしく感じる。